「大都市における環境と社会経済システムの
再編に関する総合的研究」

市民活動団体調査報告書
---横浜市青葉区・川崎市宮前区周辺を事例として---
(4)構成メンバー
 会員は、「インターネットサロン」に参加可能な範囲に住んでいる人が多い。青葉区在住の人がほとんどだが都筑区から来ている人もいる。サポートする側(パソコンの操作方法を教える側)の人はほぼ固定しているそうだが、サポートされる側(教えられる側)は流動的で、その場に立ち寄るだけの人もいるという。
会員のほぼ半数が障害者で、障害の種別は様々だが中途障害者が多いそうだ(これは、行政の隙間を埋めるような活動を目指す代表者の意向をある程度反映していると考えられる)。後日ホームページで具体的な人数を確認したところ、2001年2月当時の登録会員数は10〜70代まで43名だった(男性26名、女性17名。障害者は半数程度)。

 インタビュー当日の「インターネットサロン」には60代以上と思われる人が多かったため、会員の年齢層は高いのかと尋ねたが、実際はそうでもないという。当日は平日ということもあって人が少なかったが、土曜日は40〜50代のサラリーマンも参加しているそうだ。ただし、会員の年齢層には波があるらしく、最近は若い世代が少なくなったという。活動開始当初、ホームページの枠組み制作のために尽力した大学生たちは、施行運用までで、その後の活動には参加しなかったそうだ。

また、初期の参加者の中には10代の知的障害者もいたが、彼らはすぐに活動から離れてしまったという。インターネットを使う中で、知らずに高額の請求書が送られてきては困るというような不安を感じ、習得を躊躇っているという家族もいたそうだ。
(5)青葉区社会福祉協議会との関わり及び青葉区の特色
 「ABS21」は青葉区社協との協力事業として合意をとりつけたホームページ制作企画運営管理など社協スタッフができない事業の肩代わりをして、実費支弁のサポートを受けているのだという(*2)。したがって、NPO法人化の予定はないそうだ。現状では、財源的に青葉区社協から離れて活動を行うことは難しく、だからといって障害者から参加費をとってまで収入を得ようとは思わないという。独自事業については、かなりの赤字になっているそうである。
 
 かつて若い世代のメンバーを中心にNPO法人化を実現しようという動きが生まれたこともあったが、もともと無償ボランティアのつもりで馳せ参じた会員も多く、「市民活動」にはなじまないという人もいて、コンセンサスを得ることができなかった。その頃、MLの特異性が要因でトラブルが起きて以来、代表者自身この件について触れないようにしているそうだ。また、代表者によれば、青葉区以外の区社会福祉協議会でIT関連団体の面倒を見ているところは見当たらず、青葉区社協は先端的な活動をしているような印象があるという。

また、青葉区には「ヴェンチャー的」な小グループ(おそらく「ABS21」のことも含めての表現だろう)が数多くあり、そうしたいろいろなカラーの小グループがたくさんできて利用者の選択肢が多様になればいいと言う。大規模になればなるほど、運営自体が煩雑になってしまう。そして、そうした小グループと行政や区社協や企業が協働することにより、青葉区の市民活動が活性化すればいいと考えているそうだ。
 3.おわりに
 以上のような「バリアフリー・コミュニケーション」という考え方は他の障害者支援でも一般的なのかと尋ねたところ、今まで耳にしたことはなく、自分たちが最初なのかもしれない、という答えだった。障害者同士にとっても、縦割りの障害者団体に所属していているので、横つながりの地域での関わりに新鮮さを見出しているそうだ。これまで障害者は一方的に支えられ、与えられる立場になりがちであった。

 しかし、これからは「障害者であっても誰かを支えることができる」ようになってほしいそうだ。実際、ABS21の活動を通して、例え精神的にでも「障害者も自分とは違う種別の障害者に対し、理解し、いたわりあう」関係が築かれてきているそうだ。人を支えることにより自分自身が主体的に生きている確信をもつことができ、生きる喜びに繋がり、充実した日々を送ることができるのだという。

そして、多様性を認め合う「バリアフリー・コミュニケーション」の実現を目指すことが、ひいては障害者と健常者だけに限定されない広い意味での「多文化共生社会」の実現につながるのではないか、と代表者は語った。

*1)活動で使用するパソコンは、最初は全て参加者の持ち寄りだったが、今では社協に個人から寄付されることもあるそうだ。
*2)『平成13年度青葉区社協事業報告書』によれば、「ABS21」は青葉区社協直接サービス事業(インターネット情報サービス)の実施団体として位置づけられている。

※2003年10月現在の登録会員数は20〜70代まで51名(男性32名、女性19名。障害者は3割程度)。
                                                
 2003.10
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