銀河

14

 十二月。卒業学年のユリにとっては多忙な季節に入った。正月明けには作業療法士の資格試験がある。さらに就職に向けて、就職先になる病院や施設を訪ね、卒業レポートも提出しなければならない。
 それでもユリは慌てる様子もなく、週末には洋のアパートにやって来た。
 クリスマスイブを一緒に過ごし、歳末、ユリは三日ほど洋の部屋に泊まってから海辺の町に帰省した。洋は、一人、元日も出勤して仕事に励んだ。
 その元日の夜、洋が帰宅して間もなく、電話が鳴った。
「明けましておめでとうございます」
 おっとりしたユリの声を聞いて、洋は嬉しかった。
「おめでとう。元気?」
「うん、元気。私、和服着たの、見たいでしょう」
 とユリはコロコロと笑う。
「そのまま電車に乗って、戻って来ればいい」
 そう言いつつ、洋はユリの和服姿を思い浮かべようとした。しかし、身のこなしの活発なユリの和服姿は、どうにも思い浮かばなかった。
「そうね、今度ね。洋、一人でお正月、寂しい?」
「まあね。お屠蘇はたくさんあるから。餅を焼いて、雑煮を作って」
「お酒、飲みすぎないでね」
「ユリちゃんも、酔って花火しちゃ駄目だよ」
 そう言って洋もユリも、電話越しに笑い合った。
 洋の華やいだ正月気分は、この電話で終わった。

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