≪バリアフリー講演会≫
三宮麻由子氏「心に元気、踏み出す勇気」

概要
【題名】心に元気、踏み出す勇気
【講師】エッセイスト 三宮麻由子氏
【実施日】2006年8月26日(土曜日)
【時間】午前10時30分〜12時15分
【場所】横浜市青葉区福祉保健活動拠点 2階 多目的研修室
【主催】青葉バリアフリーサポート21(ABS21)、青葉区社会福祉協議会
【参加費】無料
【参加者】49名(定員40名)
「本当のバリアフリーとは何か」ということをテーマのひとつに掲げ、三宮氏のウィットとユーモアを含んだ幅の広い話を伺いました。
いくつか感銘を受けたお話を紹介させていただきたいと思います。
障害を特色として生かす
障害はけっして克服できませんが、無理に受容するのではなく、ひとつの特色して認識すると、プラス要素として活用できるようになります。私は目が見えないことを「景色が無い シーンレス Scene-less」という造語を作って表わしています。
シーンレスであると音が情報になります。音で情報を得る、ということが一段階進めば「音を楽しむ達人」になります。
音を楽しむ「達人」
湯沸かし器から出てくる水がお湯なのか、常温の水なのか音で知ることができます。
よく聞くとお湯は湯気の音がします。
音の話を正眼者の方と話しますと面白いですよ。
そのときは正眼者の方も、視覚障害者も「目が悪いから耳が発達するという考え」は捨ててください。
ともに「生かされるもの」
鳥の鳴き声にも感情があり、その日の天気や状況を知ることができます。
野鳥の声を聞くことから、景色が感じられるようになりました。鳥は景色を感じる窓口です。
鳥と会話をするとき、鳥と会話をするとき、1つのコツがあります。鳥より上手に鳴かないことです。
鳥と交流することによって、鳥たちと一緒で「自分も生かされている、生きる許可をいただいている」と考えるようになりました。
それから人に対する好き嫌いと言う感情が薄れました。
俳句を作る
私の属する結社の先生は、私の投句をメールで受けて正記してくださるので、私も安心して参加できます。視覚障害者には、こういう方法もあることをお伝えしたいと思います。
俳句をするには句帳と歳時記が必要です。
吟行のときは、どなたかと一緒に歩きますが、ガイドさんなら良いという訳ではなく、季語になる現象や句材を見つけられる人、つまりある程度俳句の素養がある方でないとやや厳しくはなりますが、不可能ではないでしょう。
本当のバリアフリーとは
障害者と健常者の間に垣根がないということです。
また、民族や国はもとより人間と他の生き物たちとの垣根さえも超えることです。今日はラジオで福祉の街づくりをするという試み「てくてくラジオ」をご紹介させていただきます。


ラジオで福祉街づくり 『てくてくラジオ』  http://www.amedia.co.jp/welfare/
心に元気、踏み出す勇気
バリアフリーを実現するには健常者と障害者それぞれに守らねばならないエチケットや考えがあると私は思います。
身体のことや差別用語を言ってはならないのは当然のエチケットです。
その上で一般の方は、良かれと思ってやるのではなく、早目に声をかけて、何がして欲しいのかをまず聞いてください。
福祉関係のお仕事をされている方、ボランティアをされている方は障害者と社会の架け橋になって下さい。
そして、障害を持つ方は上手に相手と対話すること。自分にはどこまでできて、どこからが限界か、できるようになる可能性はあるのか、それはいつなのかなど、徹底的に自己を分析してください。そして、会話を受け流すおおらかさを持ってください。
講演会の後、先生の新刊「福耳落語」をご案内させていただきました。
NHK出版より好評販売中です。

NHK出版 http://www.nhk-book.co.jp/index.html


また、「福耳落語」は8月12日 ニッポン放送『塚越孝のおはよう有楽町』に三宮氏がご出演の際に紹介されました。
当日の放送内容の詳細はニッポン放送ホームページ「つかちゃんコラム」にて掲載されております。
その後、時間の許すかぎり質問にご回答をいただきました。

講師プロフィール
エッセイスト。
東京都生まれ。
上智大学フランス文学科卒業。同大学院博士前期課程修了。
外資系通信社で報道翻訳。
4歳で病気の為に失明。その後ピアノや外国語、そして探鳥を通して5感を得る。
その体感し得た心象や風景を、豊かな自然と生き方として描く著作が多数ある。
2005年、視覚障害者の文化に貢献した人物に送られる「第二回サフラン賞」受賞


三宮麻由子氏公式ホームページ:http://www006.upp.so-net.ne.jp/hashiyasume/index.htm
著書:
・「鳥が教えてくれた空」 NHK出版(現在は集英社文庫に収録)、1998年
・「そっと耳を澄ませば」 NHK出版、2000年
・新刊「福耳落語」 NHK出版 2006年7月発行予定
・「おでこにぴつっ」(絵本) 福音館書店、「ちいさなかがくのとも」2006年6月号
・「心の一冊」(共著) 日本エッセイストクラブ編、文藝春秋
※その他著作・絵本・共著多数有

作曲:
・「この町で」 ポニー・キャニオンより発売
※その他、多数の雑誌等に執筆。テレビ・ラジオ出演や講演活動なども。
趣味:
ピアノ演奏、俳句、生花、陶芸、探鳥、鈴のコレクション、リコーダー演奏、落語鑑賞、園芸など

日本エッセイストクラブ、日本ペンクラブ、日本野鳥の会、日本自然保護協会、日本伝統俳句協会会員

参加いただきました方からのご感想をご紹介させて戴きます。
小鳥のさえずりのお話を興味深く感じました。
自然散策の際、色んな鳥の声が聞こえますが、姿が見えることはまずありません。しかし、素人でもはっきり分かるのは人間が近づいた時の警戒音と立ち去った後の警戒解除の鳴き声の格差の大きいこと。表情も変わっているのでは、と想像しています。
犬の翻訳機「バウリンガル」があるそうですが、バードリンガルという構想で話を進めていただけると、さらに一層、鳥対人間の理解が深まるのではないか、と感じました。
切れ味の良いお話の合間に決してよい事ばかりでは無く当然無理を承諾せざるを得ない事もあったでしょうし受け入れなければならない事も数々あった事が感じ取れはしましたが次への力強さが、優しい声のメリハリに時間が過ぎるのを忘れさせて頂きました。
目が見えない分、人の言う事への集中、素直な考えを変えないで伝える会話。今の 麻由子さんに出来る限りの応答。私たちに・踏み出す勇気・までは起きなくとも何か・ホッ・とする、そしてこんな人も・ほらぁ ここに・って思わせて頂きました。

最後に、
先生のお話を伺い、「心に元気、踏み出す勇気」をいただいた方はたくさんいらっしゃると思います。その踏み出す勇気を育てるのは自分自身です。そして、貴重な時間を共有したそれぞれ、どんな勇気を持ったか、思い出していただけましたら幸いです。
なお、このホームページは三宮麻由子氏から特別なご配慮をいただき、期限付きで公開させていただいております。内容の転用及び複写は固く禁じさせていただきます。
文責:ABS21 河内廣美

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