はじめに

   「青葉バリアフリーサポート21(ABS21)」は、みなさまに支えていただき、おかげさまで10周年を迎えることができました。関わりのあったすべての方々に対し、ここに謹んで感謝の意を表します。

   1999年秋、横浜市青葉区社会福祉協議会および横浜市社会福祉協議会のご協力で、「ITを活用した障害者の生活情報センター機能と会員相互のたすけあいシステムをバーチャル空間に設ける」ことを目的に設立準備をはじめ、2000年1月に運営会議としてのメーリングリストを3名で立ち上げたのですが、現在の会員数は67名です。

   共生のまちづくりの概念を具現化する方策が、はじめからあったわけではなく、一期一会のサポートのできる街づくりを目指して「グローバルに考え、ローカルに活動する」ことをモットーに試行錯誤してまいりました。最近、「共生」の実践活動を裏打ちする理念が、10年以上も前から「新社会哲学」として、学問的に体系化され、さらに進展した「グローカル公共哲学」が提唱されていることを知りました *1。 時を経て、理念と実践が、ひとつに結びつきました。自分とは異なる他者と「和して同ぜず」のコミュニティを築く過程で生じたさまざまな問題を学びの材料として、リフレクション(振返り)しながら、対話を重ねて解決しつつ今日まで歩んでまいりました。その中で、お互いを人間として尊重し認め合う「ケアの精神」が、人間の生き方として最も重要だということを確認することができました *2

   「あなたと私」だけの閉じた世界から、公共世界に関係を広げ、ケアしあいながら「住みたい場所で、暮したい仲間と共にいきていく」、そんな未来に開いた「こころのバリアフリー」を広める街づくりの活動を通して、一人ひとりの社会参加により生き甲斐や自己実現をめざしていこうという理想を掲げた地域密着型のささやかで地道な10年間の活動の記録が、みなさまのお役に立てば幸いです。


2010年3月吉日
青葉バリアフリーサポート21(ABS21)代表 三竹 眞知子



*1. 山脇直司『新社会哲学宣言』創文社、1999年。山脇直司『グローカル公共哲学』東京大学出版会、2008年。
*2. 今田高俊『自己組織性と社会』東京大学出版会、2005年、p.248。